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タイトル未定の連載小説6

施設

俺には何もない。
学歴もない。
運動もできない。
仕事もしてないし、したこともない。
本当に何にもない。
それなのに父は俺に何を望むんだ。
死ねということか。

しばらく考える時間があったが、考えは堂々巡りをしてまとまらない。
そして火曜日の晩に父は俺の部屋にやってきた。
「考えたか。これから、どうするつもりや?」
何にも答えられない自分がいる。
やはり死ねということなのか。
「お前は若いんや。ガッツがあればなんでもできるんや」
ガッツなんてものは一切持ち合わせていなかった。
どうすればいいのかなんて俺が一番知りたいことだ。
「みんな普通に働いとるやん。なんでお前にはできんのや」
俺だって普通に働きたい。
でも何も言い返せない。
「出て行けよ!」
沈黙で抵抗するしか術がない。
長い沈黙は父に絶望を与えたようだった。
「なんでや、なんで――」
父は言葉の途中で俺の部屋のドアを閉めた。
まるで父が独り言を言いにきただけのようになってしまった。
俺はどうしたらいい。
何もできない自分自身をどう処したらいい?

夜中にバンドの女性ボーカリストのラジオを聞く。
テープを聞き返した時のように、父をやるために背中を押してくれると思っていた。
でも普通に放送し、俺への話しかけなどは一切なく放送は終わった。
俺は満足できずに前に録音した伸びているテープを聞いた。
「やれよ」
「ボコボコにやっちまえ」
「寝てるところを襲うんだ。確実にな」
そうそう、こうこなくっちゃ。
俺は自分が死ぬか父を殺すしか道は見えていなかった。
しかし次の日になると状況が一変していた。

母がパンフレットを持って俺の部屋にやってきた。
「これな、どうや?」
ひきこもりを集めて共同生活をする施設のパンフレットだった。
こんなところになんていきたくない。
「お父さんはもうあんたの部屋には来ない。この話したから」
施設行きを条件に父からの罵声を浴びなくていいということなのか。
「大事なことやから、考えておいて」
同じ境遇の人などに興味は全くない。
ただ自分がどうすればいいかだけ知りたかった。
でも状況が許さない。
俺は施設で暮らすことになるのか。
嫌だ!
草むしりをしてどぶ掃除をして落ち葉広いをして……そんなことがやりたいわけじゃねえんだよ。
みんながやりたがらないことをやらされるなんて、まっぴらだよ。

施設の話を断ることは難しかった。
もし断ったとしたら、また父からの罵声を浴びなければいけない。
そうなると俺の精神は崩壊へと進んでいくだろう。
母はいろんなことを考えてこの選択肢を俺に与えてきたのだ。
俺はじっくり考えることにした。

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