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タイトル未定の連載小説10

あれから12年、俺は35歳になっていた。
出所の時がきてしまった。
俺は世間に出たくはなかった。
でも出なくてはいけなかった。

母の墓の前で俺は祈りを捧げた。
こんな息子ですまない。
一度垂れた頭はなかなか上がらなかった。
妹は結婚して幸せに暮らしていると聞いている。
今更俺が顔を出すなんておこがましい。
父は生きているのだろうか?
探す気にはなれなかった。
全てはあの晩、決着をつけたからもう会う必要なんてない。

今の俺は孤独しか感じられなかった。
誰に知られることもなく早く死んでいきたい。
透明人間になって誰にもわからないように消えたい。
ずっと母の墓の前から離れられないでいた。
俺は頬に熱いものを感じた。

――俺は泣いているのか

後悔をするとしたらどこから後悔をすればいい?
生まれたことを後悔すればいいのか?
父と母が出会ってしまったことを後悔すればいいのか?
それぐらい戻らないと、正せないよ。

俺には行くところがない。
実家はもう取り壊されているらしい。
引きこもる基地がもうないのだ。
どうしてこんな俺を世に放つ?
懲役よりもきつい罰を与えられているようだ。
生きていても誰かに迷惑をかけるだけ。
かといって自殺する勇気はなかった。
最後に母の墓に本当にごめんなさいと頭を下げた。

俺はどうすべきだったのか?
そしてこれからどうすればいいのだ?

街に出ても考えが堂々巡りしている。
全くわからない。
答えなんてひとつも浮かばなかった。
生きている意味なんて見出せない。
街には希望に溢れる若者たちがたくさんいた。
彼らはどうして希望を持てるのだ?
わからない、本当にわからない。

女性ボーカル

見覚えのある人物がいるポスターを見つけた。
火曜日深夜ラジオの女性ボーカルがソロデビューしたらしい。
俺は彼女のソロデビュー曲が聴きたくなった。
試聴させてもらって、歌詞を貪るように聞き入る。

皆殺しにしろよ。人類を壊滅させよ。
お前がやるんだ! お前以外に適任はいないだろ。

どうしてこんな歌詞なんだ? おかしい。
俺の頭がおかしいのか?
いつもいつも俺を焚き付けやがって!
また俺に人殺しをさせようとしているだけなんだ。
もうその手には乗らない。
俺は店頭に並べられた彼女のソロデビュー作のCDを一枚一枚割っていった。
「こいつが悪いんです。本当なんです。信じてください」
パリン、パリン、パリンと割り続ける。
サイレンの音が聞こえてきた。
あの日のサイレンの音と同じだ。

生きていることが罪な人間だ。
早く生きることをやめたい。
でもやめられないんだ。
どうして殺してくれない?
電気椅子があるじゃないか。
早く俺に座らせろ。
生きることを強要する社会が俺を犯罪者にしたんだ。
電気椅子を自由に使えたなら、何も悪いことをしなくて済んだのに。

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